その他八幡製鐵所土木部長沼田尚徳の愛妻碑
- 更新日:2019年07月25日
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広報日の里2019年8月号から転載
日の里7丁目の元会長、山村多計治さんは詩吟の大家で、このたび同好の士の頼みで愛妻碑の読み下し文を作成したと聞いたので、披露していただいた。
八幡東区大蔵の河内貯水池を訪れた方は多くおられるだろう。春は桜、秋は紅葉に彩られ、眼鏡橋を渡りつつめでることもできる。ハイキング、ドライブ、遠足にもってこいのここは、八幡から高炉が消えてしまった今も、人を呼ぶ力を失ってはいない。
明治34年に操業を開始した製鐵所は技術が幼稚で日露戦争にはほとんど貢献できなかったが、第一次世界大戦も経験して拡充に迫られ、関連して河内の渓谷に水源地の建設に着手した。大正8年のことである。工期に8年を要し、昭和2年に完工した。
工事を指揮した沼田尚徳土木部長は工事完成を喜んだのもつかの間、翌年1月、愛妻泰子さんが40歳で病死した。痛恨きわまりない沼田は、哀悼と思慕の情をこめた五言絶句を詠み、石碑に彫り込んで貯水池を見下ろす丘の中腹に建立した。碑の裏面には英訳も付している。
思妻
貞魄今安在
佳人隔九泉
舊歓帰一夢
腸断落花前
読み下し文
貞魄今安らかに在り
佳人九泉を隔つ
旧歓一夢に帰し
腸は断つ落花の前