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その他零戦操縦士の青春

更新日:2018年07月28日
広報日の里2018年8月号から転載

 1丁目在住の力丸義一さんは92歳、小柄で細身で、おだやかな風貌だが、予科練出身のゼロ戦パイロットだった。愛機の故障で着陸に失敗、大けがを負いながら一命を取りとめた。戦後は海上自衛隊に入り、操縦を志望したが航空管制に配属され、22年間専念した。翼は戻ってこなかったけれど、大空と飛行機への憧れを貫いた人生である。誕生月であるとともに終戦の月の8月を、今年も感慨深く迎え回想している。
 大正15年8月3日出生、6男2女の総領である。旧制宗像中学4年を修了した昭和18年4月、第12期甲種飛行予科練習生(予科練)に合格、鹿児島海軍航空隊に入隊した。前年6月、ミッドウエー海戦で日本海軍は大敗北を喫した。連戦連勝に酔っていた海軍は、練達の搭乗員がほぼ全滅した。帰艦すべき空母が全部撃沈されていたので、むざむざ海没してしまったのだ。搭乗員を急遽補充するため、予科練を大幅増員した。
 増員した生徒を収容する練習基地が増設された。「今日も飛ぶ飛ぶ霞ヶ浦の」と歌で有名な土浦航空隊に加え17年秋に三重、翌年4月に鹿児島に予科練の航空隊が設置された。力丸練習生が入隊したのが、創設されたばかりの鹿児島航空隊だった。同期の桜は800人いた。
 午前陸戦、午後短艇の猛訓練と軍事学で明け暮れた。その後の適性飛行で操縦と偵察に振り分けられた。力丸練習生は希望どおり操縦分隊に配属された。夏は水泳訓練、秋は野外演習、マラソン、柔剣道大会、相撲大会など分隊対抗競技が目白押しだった。負ければ総員罰直で軍人精神注入棒(バッター)が尻に容赦なく打ち下ろされる。風呂に入ると、皆の尻が赤紫色に腫れていた。
 1年後の春、37期飛行練習生鹿児島国分航空隊に移り、赤トンボでの訓練を1カ月半重ねて待望の単独飛行になった。5カ月訓練の卒業前の編隊飛行では接触事故で2人の同期生が殉職した。8月末の選別で希望どおり戦闘機に決まり、朝鮮元山航空隊で訓練を重ねた。実戦さながらの猛訓練で殉職者が続出した。
 昭和20年1月、岩国基地の332航空隊に配属された。米軍の本土空襲が本格化し、部隊主力は兵庫鳴尾基地に進出し、関西方面に来襲するB29の邀撃に全力を投入していた。力丸氏はまだ錬成員で旧型零戦により敵機を後上方と直上方から攻撃する戦法の習熟に専念していた。4月25日、射撃標的の吹流しを曳航していたとき、乗機のエンジンの回転が急に落ちた。そのまま水平飛行を続けていると、突然エンストが起きた。すぐ基地に向けて降下しながら標的を切り離し、着陸コースに入ろうとしたところ、高度低下が意外に大きく、飛行場端の突堤に脚をひっかけて機体は大破した。照準器に頭をぶつけて頭部と顔面に13針も縫う大けがを負ったものの、九死に一生を得た。
 7月に各基地から集めた練成員は編隊での空戦訓練を始めた。だが8月に入ると伊丹基地へ移動を命じられた。岩国を8月5日夕に出た列車は広島で足止めを食い、動き始めたのは6日の午前1時を回っていた。もし広島に朝まで留まっていたら、放射能をまぬがれなかっただろう。終戦の詔勅を聞いて1週間後、復員を命じられた。鹿児島空の甲飛12期の同期生798人のうち戦死事故死が197人、それには54人の特攻隊員が含まれる。
 帰郷してまもなく復員船乗組員に応募し、21年1月、輸送艦に転身した旧空母葛城に乗り組んだ。ラバウル、ニューギニアからの復員兵8000人余を乗せたときは、心身共に疲れ果てた状態に同情を禁じえなかった。復員船のあとは二、三の仕事に就いたが、昭和29年に陸海空の自衛隊が発足すると、海自に応募した。空への夢が捨てきれなかった。
 採用されて最初の2年間は舞鶴地方総監部で庶務・広報などの業務だった。航空希望だから航空管制はどうかと上司に勧められ、鹿児島の鹿屋航空基地で管制業務に就いた。まず英語の管制用語を自在に使えないと話にならない。必死で勉強した。旧軍では操縦士は自分の目と勘を頼りに、勝手気ままに飛んでいたのが、今や管制塔の指示に従わなければならない。航空機乗員は管制塔の指示に従って飛び、離着陸するのだから、管制官の責任はきわめて重大である。
 数カ所の基地を転々とし、どこでも管制に専念した。定年前年の昭和50年に小月航空基地で50万回離着陸無事故管制により表彰を受けた。翌年の50歳の誕生日に一尉で定年退官した。22年間の自衛隊生活だった。次男が防衛大に入り、海上自衛隊でパイロットになり、海将補で定年を迎え父の宿願を果たしてくれた。以って瞑すべしであろう。
愛機零戦の操縦席に乗り込んだ力丸一飛曹
江田島幹部候補生の卒業式
力丸練習生も経験した零戦21型機

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