その他北部福岡緊急連絡管
- 更新日:2020年09月29日
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広報日の里2020年10月号から転載
宗像市に北九州市水道の水が届き始めたのは、平成23年4月である。大分県山国川の水を河口の中津市から50キロ離れた小倉南区の浄水場にトンネルで運び込むのに成功し、もはや水不足が解消した北九州市から打診があった。旧宗像・糟屋郡は水源が乏しくて慢性的に水不足に悩むところが少なくなかった。北九州市からの誘いは願ってもない話だった。
谷井博美宗像市助役は積極的に対応した。県職員当時は水資源開発に携わり、状況に精通していた。助役は地続きの福津、古賀、新宮の二市一町にも話を持ちかけた。いずれも水が泣き所の市町である。自前の貯水池は小さくて渇水時にはすぐ枯れる。北九州市の誘いは魅力的だが、福岡地区水道企業団に加盟している手前、ためらいもあった。
企業団には福岡市をはじめ20を超える自治体が加盟していた。ブロック内の水源開発は共同事業であるのに、少数の市町が抜けがけするのは、いかがなものか。そういう批判にも、谷井助役はめげなかった。
福岡水道企業団から脱退するものではない。北九州からの受水で福岡ブロックの配分にも貢献できると思っている。こう主張して批判をなだめてきた。
こうした内部の温度差を抱えながらも平成14年、広域水利用協議会が設置された。福岡、北九州両市とその周辺地域で水を広域的、効率的に利用しようという趣旨だった。
組織はできたが、内部の温度差のせいで動きは鈍かった。そこに平成17年の福岡県西方沖地震が起きた。これが契機となって事態が進む。宗像市長の急死で後任になっていた谷井氏の働きかけもあり、ブロック北部の三市一町に北九州市から送水する計画が実現した。麻生渡知事、山崎広太郎福岡市長、末吉興一北九州市長の会談で北部福岡緊急連絡管の設置計画が決まった。
こうして平成23年4月に実現した緊急連絡管は、北九州市八幡西区の浄水場から日量2万立方メートルを、四塚連山を越えて宗像市をはじめ三市一町に供給している。もしもこの地域や福岡都市圏で緊急事態が発生した場合は、さらに日量5万立方メートルをプラスして送ることができる。大きな潜在能力である。
今回、この経緯を綴った「水を融通する」という本が刊行された。著者は日の里1丁目の市川喜男さん。宗像市と岡垣町の境に建設中の調整池